Tour de Banyuwangi Ijen 2.2 4th stage

Tour de Banyuwangi Ijen 第4ステージ 98km

いよいよ、最終ステージ。ラストチャンス。
阿曽と2人で逃げ切りステージ優勝を狙う。各チームの思惑が一致した逃げができれば、逃げ切り確定。リーダーチームも無理して追わないはず。

とにかく、各チームの思惑がどうなるのか分からない。
スプリント賞はかなりの接戦で、グリーンジャージ獲得圏内に15人くらいいる。首位も同率で3人いる状況。差はないと考えていい。
まだステージ優勝を挙げていないチームも、人数を減らしながらもたくさんいる訳で、これは一筋縄にはいかないはず。
こんだけ状況が複雑なら、スタートアタックをしてみる価値はある。


10分前にスタートラインを陣取る。
絶対逃げに乗るという気持ちが高ぶりすぎて、なんかすごい緊張してきた。
得てして、こういう場合は空回りに終わる場合が多いのだが...

恵の雨の中、車1台分しかない田舎道を進み、レーススタート。
スタートアタックをするが、NEXチームが集団を引き連れて追ってくる。こいつら、そんなに力を見せつけるような立場のチームではないと思うのだが。
何か、目に見えない力が作用している気がして、集団前方に位置する事だけに脚を使い、各チームの動きを見る。

NEX、トレンガヌがどうも臭い。
ハッキリとは言い切れないが、動き的にアシストが1人しかいなくなったリーダーチームに買われている気がする。もしくは、単純にスプリントに自信があるか。
特に7-11とピシュガマンが、過激なアタックを繰り返している。
その他にも多数のチームが縦横無尽に動き回り、集団の意図が読み取れない。

ピシュガマンは無理矢理にでも逃げに選手を送り込む、もしくは逃げを潰そうとしてくる。
カーテンを閉められようが、押しのけてアタックを繰り出してくる。

何度かトライするが、ピシュガマンが一緒だと潰されるし、ピシュガマンがいなくても潰されるし。
要は、ピシュガマンが納得して、かつ総合とポイント争いが危ぶまれない逃げができるまで打ち合いが続くのであろうと考える。
スプリントに持ち込みたいチームがいないのかもしれない。
考えるのがイヤになってしまうが、なかなか光明の一筋が見えてこない。
今にして思えば、自分がどのタイミングで動くかよりも、レースを支配してるピシュガマンと7-11に合わせて動くべきだった。
カオスの時の、長いものに巻かれる理論だ。

1時間半、打ちに打ち合い、集団ひとつのまま周回に突入。6kmを6周。
相変わらず、ピシュガマンがレースをカオスにしてくる。
理屈じゃなくて、脚で決まるな。と思い、集団が前に行きたがるタイミングを外して、脚を溜めようとするタイミングまで待つ事にする。
ここまできたら、無駄脚はこれ以上使えない。潰されるアタックかどうかを見極めて、うまく立ち回らねば。

2周目に入ってからだったか、ピシュガマンの巨躯が踊る先頭グループが形成されるのを確認した。集団の動きが止まった。
どうやら7-11も2人入って、ピシュガマンも2人。なんたる失態。
集中切らして、肝心な場面を外してしまった。

距離もない中、組織立って前を追うチームがいない集団。
最後まで諦めない。逃げに乗れないのはしょうがない、けど追走は外してはならない。浅田さんの言葉だ。
人数の減った各チーム。ペースアップで捕まえるのではなく、追走をかけるチームがいるはず。

ピシュガマンが睨みを効かせる中、5人くらいがアタックした。
ピシュガマンの動きを観察。容認するようだ。
ピシュガマンの動きを見極めてからアタック、結構差が空いてしまったが、ギリギリで追いつく。
ピシュガマンは最初は追ってきたが、無駄だと考えたかすぐに差が広がる。


いいペースで前を追う。
確実に少しづつ、前との差が詰まっている。目測で15秒(先頭がカーブに進入してから、自分たちが何秒後にカーブに進入したか)くらいまで近づいた。

「よし、前までもう少しだ!」、この一言が余計だった。
みんな安心したのか、本当にキツくなったのか分からないが、急に三味り出して、ローテーションが止まり出す。
本当に勘弁してくれ。もう、先頭のゼッケンまで読み取れる所まで来てるじゃないか。
単独でブリッヂをかけるか迷うが、さすがに厳しそう。

沿道から、「15seconds!」「20秒!(福光さん)」「30seconds」と、無情にも差が開いていく情報が耳に届いてくる。
なんとか粘る。とりあえず集団から逃げ切れば、ステージの賞金が見えてくる。

ラスト1周に入る前に集団が近づいてくる、もはやここまでか。
ラスト1周のゴールライン上で、集団に吸収。


最後は集団後方でゴール。
ずっと”たられば”が頭の中でぐるぐる回る。くそ。

長かったインドネシア遠征も、心配していた体調不良に悩まされることなく、無事終了。
帰国の途へ...

いや、カレンダーを見れば、出国からまだ2週間しか経ってない...
なんかもう、半年くらいいた気分だ。

一度、インドネシアに来てみるといい。

コメント

  1. すすすみません、めちゃくちゃ初歩的な質問かもしれないのですが、「三味る」というのはどういう意味というか、どういう状態になるんでしょうか??
    ちょこっとネットで検索してみましたが、ジャストな説明に辿りつきませんでした…(T-T)

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  2. 元は「三味線を弾く」で、それを短くしてしまった感じです。
    辞書を引くと色々な意味が出てくるのですが、集団内では「展開上でずるい事をしたり言ったりして、先頭交代をしなかったり、自分の力だけセーブして協調しなかったりする事」といった意味で使われているようです。ルール上では問題ありません。
    一番使われる場面としては今回のレースのように、逃げ(もしくは追走)の中で先頭交代に加わらずに後ろで脚を溜めたり、先頭にいる時間を短くしたりペースを落とすような時です。
    また逃げで「監督に言われて...」、「あなたとは協調できない...」、「後ろを待っている...」などように、本当かウソかは別にして、理由付けをして先頭交代に加わらない"グレー"な場合もよくあります。アジアツアーに多いです。

    しかし、展開上でローテーションに加わる必要が無い場合には、「三味ってる」とは言われません。
    例えば先頭でチームメイトが逃げている時に追走に入った場合は、逃げが捕まってしまわないように先頭交代をする義務が基本的には無い(協調して前を追う場合もあり)ので、堂々と脚を溜めることができます。
    また、"本当に"疲れてひと休みしたい時は、少しだけ後ろで休むことができます。これは自分を含め、できるだけ協調して、できるだけゴールまで逃げ切れるように、持ちつ持たれつの暗黙の了解で行われます。人数が多い方が脚を使わないので。今回のレースのように、追走で1人では前に追いつけないような場面では、脚に余裕がある選手が長めに牽いて前に追いつけるようにします。しかし、疲れてない(もしくは疲れたフリ)のにずっと後ろで脚を休めるのは、三味っていると言えるでしょう。
    またチーム単位でも言えることで、逃げに選手を送り込んでいなかったり、スプリントに持ち込みたいチームが集団のペースアップをしない。集団コントロールすべきチームが何もしない(他のチームが人数を出しているのに)などです。

    三味線弾く行為は、いわば"ずる"をしている状態なので、周りからの評価が下がったり、いざピンチの時に協調を得られなかったり、諸刃の剣的な作戦と言えるでしょう。

    展開上では脚を使わないようにすべきなので、一概に悪いとは言い切れませんが...
    また逃げで三味り合いになると、面白いレース展開にもなりにくいです。
    「ゴールまで協調して逃げ切る」逃げと、それを「必死で追う」集団がいる構図が、ロードレースの面白い展開となる基本になります。
    後ろを見るレースよりも、風を切って前へ速い展開するレースの方が、見ている側も面白い(やっている側はキツいですが)ですからね。

    三味線弾きはとても難しいです。
    逃げに乗った時などは、逃げ切りを狙ってガンガン回って、ギャンブル的な面白いレースをしたいので。
    けど、どうしても何が何でも結果を残さなければならない、明らかに格上の選手相手に同じように走ったらバカを見るだけ...
    「こう走りたい理想」と「自分にできる事の現実」の狭間で、葛藤するのも事実です。

    なので、三味る時は上手に三味りましょう。

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  3. めちゃくちゃ懇切丁寧な解説ありがとうございます!!
    色々な状況がある事も、またそれがグレー扱いだったり容認されたりする事もとても人間の感情に基づいていて面白いです!
    しかも微妙な感情の機微に基づく部分が大きいから明確にルールで切り分けられる箇所でもないし…
    だけど確実にその状況下に居た選手達には何かしらの感情を残す(行き過ぎた場合など)ため、その後の評価や協調に響くとか!!
    フムフム成る程なぁ〜と思いつつ拝見させていただきました!!
    でも一つだけ思ったのですが、この解説、ブログ本文で扱ってあげた方が良かったのでは…というぐらい内容が濃かったので、コメント欄では勿体無い気がしました…
    いや、そんな初歩的な事が分かってないのは私だけかもしれませんが笑

    あと一番驚いたのは「三味線を弾く」に、本当に三味線を弾く以外の意味があったという事でした…(´⊙ω⊙`)…

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