刺激

ロード選手が避けては通れぬ長距離移動ではあるが、こればかりは如何ともし難い。

12時間くらいの飛行機移動であれば慣れてきたが、それよりも長い移動になると身体的精神的疲労が加速度的に蓄積してくる。
遠征に限らず移動にかける時間とお金は、少なければ少ない方が良いのだ。

長時間に渡って座席に着いていると、身体の水分や老廃物、病原体等を運ぶリンパ系がうまく機能せずにむくみ、筋肉は凝り固まり、パフォーマンスに悪影響を与える。またむくみが酷い状態だと、疲労感や虚脱感などの症状が出ることもある。

リンパ管は血管よりも細く、血管に比べて1/15くらいの速さでしか自発的に収縮(身体を動かさない状態で)せず、更に飛行機で高高度にいる場合は気圧によりリンパ管が引っ張られリンパの流れが悪くなり、体内の水分や老廃物が回収されずに組織間に滞ってしまうので、むくまない訳がないのだ。


浮腫み対策にはもちろん、コンプレッションウェアが有効だ。
YONEX STB-AC03は動作のサポートもしてくれる。

リンパ管が動かずに流れがないと免疫力も低下するので、飛行機内の乾燥と不特定多数の乗客に囲まれて何時間も動かないでいる状態は、風邪をひくリスクも増加する。
移動の疲労を少しでも減らす為にも、ストレッチやマッサージをしたい。リンパは右上半身と、左上半身から下半身に流れる流れがあり、それを意識してマッサージする。
筋肉に達するまで力を加えずとも、皮膚の表面を軽くさするくらいでリンパ系の働きは復活する。

また、長時間座席に着いている際には姿勢にも気をつけたい。
特に腰。骨盤から腰にかけての背骨のカーブを保持する事。腰が潰れると全身に悪影響が及ぶ。腰が潰れたまま座っていると、特に自分は臀部からハムストリング、腸腰筋から腰部にかけての範囲が骨になったように固まってしまう。
それらを避けるためにできる事は、ブランケットを丸めてシートと腰の間に挟み腰の湾曲を保持して、枕を腿の下に敷いて臀部に圧が集中しないようにする。
そしてシートは倒さない。つい倒してしまいたくなるが、(エコノミー席の場合は)中途半端な倒れ具合なので、腰に負担のかかる角度になる。

そしてよく水分を摂り、高塩分、高脂肪、高カロリーな物は避ける。
自分がよくやるのは、ひたすらシュガーレスガムを噛み続けて、空腹と口の寂しさを紛らす。

また、あくまで個人的によくするのは、できる限り寝続ける事。
時差ぼけ調整で寝るタイミングを計る頭脳明晰な人もいるが、自分はあまり寝たい時に寝れるタイプではない。そしたらできる事も限られる機内、到着までずっと寝ていて頭の中を少しでもクリアにしておこう、という半ば諦めの精神だ。
寝付けない場合は、書籍を3冊程ローテーション(1冊に飽きたら、もう1冊...を繰り返す)させて、脳を疲労困憊・酸欠の状態にして、強制的に眠気を引き出す戦法を取っている。
あるいは、離陸から着陸まで映画を寝ずに見続ける。突き抜ければいつでも寝れる状態になり、到着地で寝るべき時間まで我慢すれば、時差ぼけも一発で乗り切る事ができる。
もちろん、以上の事はお勧めはしていない。


移動後はトレーニングを行っていないがダメージは受けているので、移動後の調整は非常に大切だ。
各人によって調整方法があるであろうが、個人的には段階的にギアをかけていき、全身の筋肉を積極的に動かしていきたい。
始めは筋肉が動かないので何だか疲れている様なキツい感覚に捉われるのだが、強度を上げて踏み続けることで刺激が入り、凝り固まった身体が本来の動きと筋肉の弾力を取り戻して、ふとした瞬間に脚が突然回り出すのだ。この瞬間の気持ち良さは病みつきなる。
ただし経験上、数十分で身体が戻る事もあれば数日かかる事もあり、時間がかかる時はちょっとイヤになってしまう。

練習後には入念なストレッチを。
身体の力が入るラインを意識しながら、全身のストレッチ・マッサージを行う。
つい、気になるところに意識が集中しがちだが、身体はすべて繋がっている。全身の筋肉の張りを均一にするイメージで。


欧州に渡り始めの頃は、軽いギアを脚に負荷のかからない強度で回して”回復”に努めていたのだが、いつまでたっても身体が重く感じて回復しない。すぐにレースを迎えるのだが十分な調整が行えず、良いパフォーマンスを発揮できない事が多々あった。今思えば、実はそれは身体が必要としているリカバリーではなかったのである。
長時間移動の疲労は高強度での筋破壊による疲労ではないので、”回復・修復”をさせる必要がない。多少はあるが。どちらかというと、”なまった”状態に近いのだろうか。
しばらくの低強度のベーストレーニングから高強度のトレーニングに移行した際に感じる、脚の重さ、ダルさ、疲労感にも同じ事が言える。と、思う。

また、身体の体液の巡りを良くする事も必要だ。湯船につかったり、脚を上げて寝る事も有効だ。

むりくり重いギアを回す必要は無いので、日頃から自分の身体にどの様な刺激が必要か、自分の身体の状態を良く知るためにもいろいろ探って頂きたい。

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